安室がようやくコナンの正体に気がついた。後述するように、安室はコナンがただの小学生ではなく、小五郎を眠らせて推理をしていることには早い段階で気がついていたので、ずいぶん時間がかかった気がする。
安室「前々から似ているとは思っていたが…」「やはりあの少年はコナン君…」
「つまりこの少年は」「工藤新一という事か!!」
ファイル1136
そもそも安室の最初の狙いはシェリー
ジョディ「そしてその標的は恐らく…」
「組織でシェリーと呼ばれていたあの茶髪の女の子…」
コナン「だろうね…」
60巻ファイル3
安室「ええ…事件は解決しましたよ。名探偵のおかげでね…」
ベルモット「あらそう…」「ところであの探偵といつまでつるむ気なの?」「キールの一件でシェリーと関わっている疑いのあるあの探偵に張り付きたいってあなたが言うからいろいろサポートしてあげたけど、もう用はないんじゃない?」
78巻ファイル10
シェリーの捜索は組織にとって常に最重要のミッションなので、バーボンがシェリー捜索に乗り出したことは自然だ。安室は幼少期に灰原の母・宮野エレーナと接触しており、その娘に会いたいとの別の動機が影響した可能性もある。
赤井の死亡に疑い
安室「赤井が死ぬ前後の詳細なファイル…」「もう一度見せてくれないか…」
「どうやら一から調査し直す必要がありそうだ…」
78巻ファイル7
ベルモット「まさかあの男が生きてるっていうわけ!?」
安室「ええ…」「僕の推理が正しければね…」
85巻ファイル1
安室はミステリートレイン編でシェリーを発見、その後シェリーはベルモットによって殺されたと考えている。一方、一瞬姿を見せた男に赤井の影を感じ、赤井死亡に関する再調査を始めた。
そもそも、警察学校同期の諸伏を死に追いやったと認識している赤井が黒の組織に殺されたことが信じられなかったことも背景にある。安室の目的は、ミストレを境に変わったことになる。
この過程で調査したのがコナンだった。赤井偽装死の首謀者であるだけでなく、FBIと協力して黒の組織に対抗しようとしていることに気がつく。
安室「何をしているんだいコナン君」
コナン「う、腕時計の蓋が壊れちゃって…」(「…さすがにこの男の前じゃ眠りの小五郎はできねぇか…」)(「黒ずくめの組織の1人、バーボンだからな…」)
「俺が組織の薬で幼児化している工藤新一だってバレたら…」「いくらベルモットが何かの理由で黙っていたとしても…灰原も幼児化してるってことがバレかねないし…」
78巻ファイル9
ベルモット「幸運にも偶然シェリーの情報が舞い込んできて…そのシェリーも葬ることができたんだから…」
安室「いや、俄然、興味が湧いてきましたよ…」
「眠りの小五郎という探偵にね…」(コナンの顔を思い浮かべながら)
78巻ファイル10
ただし、コナンを小学生離れした頭の良い少年という認識から、何者かが幼児化した姿ではないかと考えるには大きなハードルがある。現状、安室が組織の研究に関してどのくらい知っているかは触れられていないが、ほとんど予備知識はないとされる。
このため、安室は長い間、コナンが幼児化していると考えることはなかった。自分が警察学校時代にコナンと似た少年と出会っていたことを思い出したからといって、急にコナン=新一に至るのはやや強引な気はする。
ラムの工藤新一調査指令
85巻の緋色シリーズを機に、コナンのことを探るインセンティブがいったんなくなった安室だったが、ラムから工藤新一の調査を求められた。
工藤新一の情報を要求する
Time is money!
急げよバーボン
―RUM―
95巻ファイル5
工藤新一の情報
急げ!
Time is money!
―RUM―
95巻ファイル8
謎の老人からも調査を指示されている。
「江戸川コナンを調べ上げろ…骨の髄までな…」
105巻ファイル2
ただ、安室がコナンの正体に気がついたのは、直接的には昔の出来事を思い出したから。ラムや老人に指示され調べた結果、新しい情報を得たためという明確な描写はない。さらにいえば、ラムや鷹爺から指示された工藤新一の調査に安室が真剣に対応したかも定かではない。
ちなみに、「黒鉄の魚影」で灰原に変装し、世界中の防犯カメラに写り込むことで老若認証を巡る灰原の存在の信用性を下げたベルモット。この行動について、安室はコナンにこう言っている。
コナン「えっ!?ベルモットが」
安室「ああ。おそらくベルモットがいろんなシェリーに化けて・・・」(中略)
コナン「でもどうしてベルモットが…」
安室「君なら心当たりがあるんじゃないかと思ったんだけどな」
劇場版名探偵コナン「黒鉄の魚影」
ベルモットはコナンに、灰原から手を引くように求められている。このことを安室はベルモットから伝えられているから、安室がこうした発言をするのだろうか。もっとゆるくベルモットからコナンと蘭との関係を示唆されていて、それを踏まえてこうした発言をしたのか。
ベルモット「どうやら一応の信頼は得られたようだけど…」
「私との約束は守ってくれるわよね…」「バーボン…」(沖矢、世良はイヤホン、安室はスマホでそれぞれ何かを聞いてる)
76巻ファイル5
ここでベルモットが安室に伝えた約束というのは、宝物とまで表して守っているコナンと蘭を危険に晒さないこと。だが安室はその理由も、さらに灰原の幼児化と生存も知らないはず。だからベルモットがコナンに配慮する理由も、灰原の生存を隠す理由もわからず、こういう発言にはならないはずなのだが。
もっとも、コナンがFBIとともに黒の組織との抗争に深く関わっているということで「君なら分かる」と発言したと考えても、大勢には影響はなさそうだ。
お茶会では正体を明かさなかった
ところで、安室がコナンの正体をこのタイミングで知ったことで、95巻のいわゆる「お茶会」で安室は工藤夫妻や赤井からコナンの正体を告げられなかったことがわかった。
安室「ぬかったな赤井秀一…」
赤井「その言葉…」「そちらにそっくり返すとしようか…」
「バーボン!」
安室「何を馬鹿な…」「沖矢昴の正体を見破られた時点で貴様の負けだ…」
(中略)
安室「あ、あなたは…」
優作「この家の家主の工藤優作です…」
「今日は以前と違って…」「お連れの方達はいらっしゃらないようなので…」
「ゆっくり妻の淹れた紅茶でも味わっていってくださいね…」
95巻ファイル9
コナン「気になるのは2つ…海猿島から帰った時父さんと赤井さんが話してた…」
優作(「例の深夜お茶会の答えをまだ頂いていませんし…」)
赤井(「ええ…」)
100巻ファイル9
コナン陣営の協力する気のなさというか、コナンがもはや読者より知っている情報がないため、ときどきアホにみえるというツッコミは置いておくが、お茶会ではコナンの正体について言及されなかったことも確定した。
安室は工藤新一の情報を探りに工藤邸に侵入している。そのため、お茶会では新一の情報がなにか安室に与えられ、その交換条件として工藤夫妻や赤井側から何らかの要求が安室に提示されたと思っていたが、安室は新一の情報が手に入らなかったのにノコノコと撤退したというのか。
そもそも、「答えをいただいていない」という優作の発言は、誰が誰からの答えをもらっていないということなのだろう。赤井の「ええ」という相槌があいまいすぎてヒントにならない。
安室がこのタイミングでコナン=新一を確定させたことで、お茶会の存在意義はますます分からなくなった。
デメリットが見当たらない
話を戻す。新キャラが幼児化現象に気がつくためのには、いくつかハードルが用意されている。安室についてもそれはあてはまるはずだ。
ジョディ先生のように、シェリーと灰原が同一人物であることだけは雑に理解するケースや、世良のように身近な人物の幼児化を目の当たりにし、幼児化現象を受け入れざるをえないケースがある。安室はこのどちらでもないため、幼児化現象についてどういった立ち位置をとるのかは注目されるだろう。
もっとも、安室が幼児化をどう思っているかより、コナン=新一の判明によって安室の行動がどう変わるかのほうが重要ではある。安室が幼児化に気がついた経緯の弱さは適当に処理されるのではないだろうか。
では、安室がコナンの正体を知ったことで、どんなことが起こるのだろう。
幼児化の実例を知り、さらにそれを引き起こしたのが自身が潜入している組織の研究であると知る。安室は、キッドに対して以前自分に会ったことがあるのではないかと指摘している。
安室「君のその感じ…」「どこかで会った気がするんだが…」
キッド「さあ…覚えてねえなあ…」
101巻ファイル9
ミストレで自らの前で爆死した灰原は偽物だと確信するのは時間の問題だろう。
安室は、灰原が組織の施設から脱出できたのはコナンと同様に身体が幼児化したからではないかと推測し、赤井を捜索した時と同様、灰原が失踪した直後にコナンの回りに現われた小学生の少女を探すことになるのではないか。
こうした現状にデメリットはあるのだろうか。メリットしかなく、現状具体的なデメリットは見当たらないといえる。
今回、コナンと安室がそれぞれ黒の組織と接点を持つ前から知り合っており、ある意味特別な関係であることが判明した。いくら公安警察に高い忠誠心を持っている安室とはいえ、公安のためにコナンや蘭を危険にさらすような行動をとるのは考えにくいのではないか。
であるならば、安室もコナンもそうなのだが、それぞれ持っている情報を開示して連携してほしいというのが正直なところだ。赤井、工藤夫妻、安室(公安)、コナンといった主要人物が情報を共有すれば、正直黒の組織など怖くない。
もっとも、そんなことを言ってしまえばコナンという作品が成り立たないのだが。
〈下記はキャラクターの思考や認識の変遷を整理する過去記事です〉