若狭留美の人物像

若狭先生はどんなキャラクターなのだろう。3人のうち羽田浩司事件にかなり深く関わっていること、格闘能力や高い推理力などいろいろと特徴はあるんだけど、一番不気味なのは少なくともコナンの幼児化を認識していること。登場時点でコナンの正体を認識してるのって、これまでのコナンだと灰原くらいだ。ラム編が終結したあと、コナンのお話が終盤に向かう時、若狭先生は一体どんな存在になるのだろうか。

基本データ

・37歳、女性
・帝丹小学校1年B組副担任

登場回

     エピソード名
91巻 新任教師の骸骨事件
92巻 白い手の女
93巻 燃えるテントの怪
97巻 死体はダーリン 

コナンの幼児化にあたりをつけて登場

若狭先生は初登場時、一般的なコナンキャラと同様に四角囲みで若狭留美(37)と紹介されている。

若狭「あ、あの…若狭留美です…小林先生より10歳もオバサンですけど…」「ど、どうぞヨロシク…」

91巻ファイル7

 自ら「小林先生より10歳もおばさんです」と言っているが、年齢の真偽についてはけっきょくこれをどう解釈すればいいのか、という点が大事になるだろう。

この描写で「37歳は確定」ということを読者に伝えたいのか、それとも37歳というのは偽りで、何らかの要因で年齢を偽っているという示唆と考えるか。これは正解がなくて難しい。現段階では、その他の描写を状況証拠として積み上げるしかない。

若狭先生は帝丹小に赴任したその日に事件に遭遇しているが、のちにコナンが分析したように、これは若狭先生が一枚噛んで仕組んだこと。ゲスゴルファー事件でも同様で、その目的はコナンか灰原の観察である。

このエピソードだけでは分からなかったが、のちに若狭先生はアポトキシンの投与リストを所持していることから、この時点で若狭先生はコナン=新一にあたりをつけていたはず。確信を持ってコナンに近づいたのか、ベルモットのように疑いをもって近づき確信するに至ったのかは不明。

コナンと若狭先生のこれまでのエピソードでは、コナンが子供離れした推理力の持ち主ということ以外は描写されておらず、若狭先生がなんらか証拠をつかんだとまでは見られない。コナンの正体を確かめたかったなら、ベルモット編でニセ新出先生が健康診断をしたような何らかの描写が必要になるので、ここでは若狭先生は確信をもって近づいたと考えるのが妥当。

ちなみに、小学校の副担任ということだが、授業をするのはあくまで小林先生だろうから、若狭が教員免許(小学校教諭)を持っていなけらばならないということでもなさそう。帝丹小学校はおそらく私立小学校で非常勤職員の採用には比較的自由が効くので、若狭が途中で来るのもありえないことではない

コナン「この時期に副担任なんて珍しいな…」

灰原「このクラス、私やあなたのような転入生が多くて人数が増えたからなんじゃない…」

コナン「なるほどね…」

97巻ファイル7

こうやって灰原に言わせているところからも、若狭はコナンか灰原に近づくために来た証拠だろう。この会話をしている灰原のとコナンの後ろの席では同じく転入生の東尾マリアちゃん*1の姿が。灰原のこの説を補強するめのマンガとしての描写なのか。あるいは別の意図があるのか。

マリアちゃんはこの手のキャラにしては珍しく、原作で初登場しており、クラス内ではモブキャラではない。同じ話で登場したたくま君がモブ化しているのに比べると、烏丸がボスだと判明した回のオモテの話がマリアちゃんを探す話だったことには驚かされたのでは。

マリアちゃんの動向次第では彼女がメタ伏線として機能したり、組織編に絡む可能性もあることから、もうトンデモ説とは言えなくなった。

 

警戒するコナン

コナン「(若狭留美先生…帝丹小学校1年B組副担任…)」「(先日、たまたま先生のマンションにオレ達が呼ばれ…偶然、隣人の殺人事件に出くわしたと思ったけど…)」

「(あの時、先生の部屋で見つけたその日の朝のコンビニのレシートには…オレ達分の皿やマグカップまで買い足してあった…」「(つまりあの朝、隣人が殺人を犯す事を察知し…オレ達をそれに遭遇させる為に…わざと屏風を汚しその描き直しを手伝わせる理由で部屋に招いたんだ…)」

「(いや…俺たちじゃない…狙いはオレか…)」

 「(そもそも古い倉庫で見つかった白骨死体の事件のときも何年も開けられていないはずの地下への扉のサビがはがれた跡が真新しかった…)」「(アレも先生があらかじめ白骨死体を見つけた上で…オレを事件に関わらせるように仕向けたとしたら…)」

「(まさか…このキャンプも…)」

93巻ファイル6

コナンは若狭先生をかなり疑っている。若狭先生が仕掛けたコナンに対するメッセージにコナン自身はちゃんと気がついているの大事。狙いは自分かも、という点も心配しており、警戒レベルはラム候補者3人の中では最も高いのではないか。若狭先生が相当切れ者であることも見抜いている。

ゲストキャラ「ちょっとじゃないだろ…失明寸前で義眼になる所だったんだぞ…」

灰原「(ドックン…ドックン…ドックン…ドックン…)」

コナン「(何か握り締めてる…何だ!?)」

93巻ファイル6

灰原センサーが久々に作動。ミストレ編で自身への危険が軽減されたことで故障したとされていたが。灰原のセンサーは反応しないことはあっても、現時点では組織と関係のない人に対して誤作動したことはない。作動したように見えても、黒田のときにようにセンサーが反応したのではないという描写が入る。

コナン「オメー、本当に見覚えねぇのかよ…黒田管理官のこと…」

灰原「ええ…」

コナン「…の割にはオメーかなりオレにしがみついてたじゃねーか?

灰原「あのねぇ…あんな恐ろしい顔を間近で見せられて平気でいられるわけないでしょ?」

コナン「あ、そう…(普通に顔が怖かったのね…)」

87巻ファイル10

とするならば、若狭先生はこの時点で組織の現構成員か元構成員であると断定できる。

コナン「(ポケットに土が付いて…形が…)」「(ん?何だ?あれ…)」

93巻ファイル8

 冒頭で若狭先生が握りしめていたのは将棋の駒だと判明。

信用する灰原

コナン「お前、気付いてねぇのかよ、あの人右目が…」

灰原「言っとくけど私、好きだから若狭先生…だから悪く言わないでくれる?」

コナン「はぁ?」

93巻ファイル7

 この灰原の言い方。バーボン編でいきなり怪しい沖矢を「ホームズファンに悪い人はいない」っていうギャグみたいな理由で信用したコナンの姿に重なる。この時は沖矢昴という人間を作り出した本人がコナンだったので信用するのは当たり前の話だけど、今回、灰原が若狭先生を信用するのにはかなり重大な理由があるように思う。

なにせさっき組織臭を放っていた人だ。灰原は基本的に他人を警戒し、なんとなく正体に勘付きつつある沖矢に対してさえも気を許すのにもとても長く時間がかかっているのを考えると、会ってそこそこの若狭先生をここまで信用するのは正直異常といえる。

上記の会話をしているのは、歩美ちゃんが解放されて若狭先生と話している様子を笑顔で見つめているとき。灰原が若狭先生の行動からなにか信用に足るものを得たとするならば、予想としては

・歩美ちゃんと若狭先生という親子みたいな様子そのものを、灰原自身と誰か(母・エレーナや姉・明美?)に重ねた

・自分にとって大事な歩美ちゃんをこれで2度も助けてくれた若狭先生への感謝

あたりが考えられる。果たしてこれくらいの理由で灰原が組織臭を打ち消すまでの理由といえるのか、が読者それぞれで考え方の分かれるところだ。

後述するが、若狭先生が演技に秀でた人物描写をいまのところされていないことから、歩美ちゃんを助けて抱きしめたときの涙は本心からのものだろう。灰原もこの様子を見ており「やっぱりこの先生は信用できる、さっき感じたのは気のせいだったんだ…」と思ったから、「先生が好き」となったのかも。

若狭「ねぇ…灰原さん?」「あなたが住んでる阿笠博士さんの家の隣って工藤ってお宅よね?」

灰原「あ、はい…」

若狭「会ったことある?その家の息子さんの新一くんに…」

灰原「いえ、ないですけど…どうしてですか?」

若狭「ホラ、今話題になってるから…ちょっと聞いてみただけよ…」

灰原「……」

元太「何だ何だ?」

歩美「先生と何話してたの?」

灰原「大した事じゃないから…」

95巻ファイル3

ここでも、灰原は新一のことを聞かれたのに、恐怖や不安、疑念といった感情を感じていない様子。それどころか、「大した事じゃない」と言い、隠している。これは若狭先生に新一のことを聞かれたことを放っておいても大丈夫と判断した、ということ。

もちろん、若狭先生が言ったように、世間で話題になっているから尋ねてみただけ、というのを信じたとも考えられるが、疑い深い灰原がこんなことするのはちょっとギャグな感じが…。

「聞いてみただけ」という若狭先生のあと、灰原の三点リーダー「…」が入っている。コナンにおいて三点リーダーは意味がないと使わないので、ここでは灰原がなにか考えを巡らせたうえで、その後「大したことない」といっても大丈夫と判断したのだろうから、やはり先生の言葉を文字通り受け取ることにした、とは考えづらい気がする。

信用できる人だと判断したのは間違いない

「好きだから、若狭先生」が、何者か灰原が若狭の素性に気がついたり思い当たる節があったりした結果によるものなのか、それとも正体はわからないけど、信用できる人だと判断したことによるものなのか、これは考察や推理というより読者個人の主観?かもしれない。

個人的には後者「正体はわからないけど信用できる人だと判断した」のではないかと考えている。そもそもテント炎上事件まで、灰原と若狭の接点は3回のみ。この間の若狭先生と灰原との描写では、灰原が若狭の正体に勘付いたような描写はない。

描写や伏線、場合によってはメタ伏線でもいいが、それがないということはこれから先「実は灰原は顔に見覚えがありました〜」「実は言葉遣いが〇〇に似ていました〜」が全部後出しジャンケン

これもまた後述するが、灰原は推理できるキャラではあるが、コナンのような高度な推理はできない。レシートや扉のサビをみただけでは勘付けないのだから、灰原が仮に正体を特定できるとすれば、得た情報は生の情報であるはず。

例えば「服に見覚えが」「同じ口癖」とか、沖矢の正体に気付いたジョディ先生のように、情報そのもので人物を特定できるものとみるべきではないか。

ならば、読者側やコナンに対してもなにかしらヒントがないと、推理マンガとしてはちょっとなという気がする。

テント事件で、若狭先生の右目が義眼であることが実質的にコナンによって裏付けられたのでその前提で考えてみても、「義眼」で思い当たる節があるのならラム編冒頭、灰原自身が「奴には片方がない」くらいで「もしかしたら」のような描写があるのが自然ではないか。

となると、やはりこのテント事件以前に灰原と若狭の間にそういった描写はない以上、接している限り優しいし、料理はうまいし、子どもを危険を顧みず助けてくれるところから灰原との関係を探っていくべきな気がする。

もっとも、そんな理由で灰原が怪しい人間を信用するかというと、これもまたかなり考えにくいのが悩ましい。「それも私たちを油断させる彼らの作戦かもしれないじゃない!」ってコナンをいつも叱っている灰原が、この先生の様子を素直に受け取るとは思えない。

正直、現状どう考えても双方に反証ができてしまうので、これは今後の継続課題だろう

右目が義眼

ゲストキャラ「ちょっとじゃないだろ…失明寸前で義眼になる所だったんだぞ…」

灰原「(ドックン…ドックン…ドックン…ドックン…)」

コナン「(何か握り締めてる…何だ!?)」

93巻ファイル6 

「義眼」という言葉に反応し、組織臭を発してしまう。同時に所持している何かをポケットの上から握りしめてしまう。

歩美「先生…先生?若狭先生!!」

(辺りを見回して)「あ!」

(中略)

灰原「(この人…右目が見えてない!?)」

コナン「……」「(そういえば若狭先生が副担任になった最初の挨拶の時も…教卓に頭をぶつけてたし…)」「(古い倉庫の地下室の扉にも…頭をぶつけていた…)」「(ドジな先生を装ってこっちを油断させる策略だと思い始めてたけど…)」「(あの頭をぶつけたのが…ワザとじゃなかったとしたら…)」

93巻ファイル6

コナン「お前、気付いてねぇのかよ、あの人右目が…」

灰原「言っとくけど私、好きだから若狭先生…だから悪く言わないでくれる?」

コナン「はぁ?」

93巻ファイル7

右横から話しかける歩美ちゃんに気が付かない。声に気が付かなかったのはなにか別の考え事をしているからなのは明らかだが、歩美ちゃんをすぐに見つけられなかったのは右にいた歩美ちゃんが視界にいなかったから。歩美ちゃんと若狭先生の位置関係はほぼ真横なので、すぐに視界に入らないのは右目が見えていないから、と考えられる。

「若狭先生が義眼」であることの可能性とその確定は、コナンの中ではこの事件で終わっていると考えてよさそう。コナンの灰原に対する言い方にを文字通りとれば、コナンは右目が義眼であると確信しており、それに気がついてないのかと灰原に問う。

このやり取りが「右目は義眼ではなかった」というミスリードという可能性もある。ただ一連のやり取りを見ているとこれは素直に受けていいのではないだろうか。

ちなみに、若狭先生は歩美ちゃんを助けたあと右目に涙をためているが、義眼になったら涙も出なくなるのか、涙が出ることもあり得るのかは不明。

羽田浩司を回想

若狭先生が特殊なのは、ラム編候補者の中では現時点で最も羽田事件に関する独自に持っている情報が多い点。

羽田浩司事件を回想し、黒田と同様に血を流して倒れている羽田も回想しているが、それに加えて事件当時羽田と言葉を交わしている回想まで出てくる。

若狭「(御守り…御守り…)」

羽田浩司〈回想〉「『遠見の角に…好守あり』ってね…」「それでも僕を…殺すと言うのですか?」

若狭「(馬鹿な奴…)(馬鹿な…)(馬鹿…)」

(若狭、右目を押さえて倒れる)

小林先生「若狭先生大丈夫ですか?」

若狭「は、はい…」

コナン「……」

若狭「最近貧血気味で…」

目を押さえていた…やはり右目に障害が…

灰原「……」

97巻ファイル8

 「御守り」に反応してなにかを思い出した、というか思い出さざるをえなかったようだ。羽田浩司が手に持っているのは「角」の駒。後に若狭が所持していたのは角の駒だと判明するが、この時点ではわからなかった。オモテの話は婚約者を殺した女性の話で、その女性を心配して歩美が四葉のクローバーをプレゼントするという会話のところでの反応だったので、若狭の過去でも似たような状況があったのではないかと推測できる。

オモテの話をウラの話とつなげるメタ伏線は青山先生の得意技で、バーボン編初回「赤白黄色と探偵団」でも、3人の容疑者のうち一人が犯人、もう一人が赤井が変装した沖矢でバーボン編全体も3人の容疑者からバーボンと赤井を探す話であった。

このピクニック事件でも、オモテの事件の構図が羽田浩司事件やラム編の構図に何ら関係していると考えるのが自然だろう。

単純に考えれば羽田浩司と若狭は婚約していたが、若狭は羽田浩司を殺してしまい、何らかの理由で現場から角を持ち去った。オモテの事件では歩美ちゃんが婚約者の女性を心配しクローバーをあげようとするが、実はその本人が殺した張本人であり、その御守りはもらうことができない、と考えれば、下のような流れにスムーズに繋がる

歩美「このクローバーどうしよっかな…」

灰原「自分のにすれば?」

元太「誰かにあげてって言ってたよな?」

光彦「ええ、幸せが欲しい人に…」

歩美「じゃあ若狭先生にあげるよ!」

若狭「え?」

歩美「だって先生けっこードジだからお守り!」

若狭「ありがと…じゃあハンカチに包んで…」「大切にするね!」

歩美「うん!」

(クローバーを捨てた若狭をコナンは見つめる)

97巻ファイル9

若狭先生は、何らかの理由で自分が歩美ちゃんからのクローバーをもらうことができない、あるいはもらいたくないと考えたからこういう行動をとった。その背景として、上記のように若狭は婚約者である羽田浩司を殺してしまったとすれば、今の所自然な解釈と考えられるのではないだろうか。

現場にいたことがほぼ確定

ここまでの描写で、若狭先生は17年前に羽田浩司事件に関与しただけでなく、現場にいて、羽田を殺した可能性が出てきた。若狭が回想する羽田は少なくともネットに何者かがアップしている情報以上のものだし、黒田の回想には含まれていないものだ。

若狭の回想では羽田がより大きなコマで描かれていて、口から血を吐いている様子、割れたティーカップ、手についたはさみの痕までしっかり描かているから、これはまさにこの姿を自らの目で見たことを表したいと考えて間違いないだろう。二次情報からの回想なら黒田みたいになにかの記事が背景においてあるべきだ。

ちなみに、「それでも僕を殺すと言うのですか?」といった時の羽田の表情のが引っかかっている。なんか、目の前で自分を殺すと言われたときのセリフじゃなくて「あいつなら自分を殺すと言いかねない人物が、自分を殺すといっている」と聞いた時の表情みたいだ。

経緯はいまのところ分からないけど、何らかの理由で婚約者である若狭が「あなたを殺す」「あなたを殺せと命令されたの…」「殺してやる!」などと言ったときに、羽田は「なぜですか」「どうして僕を殺すのですか?」「それでも僕を殺すのですか?」などと反応するほうが自然に思える。突然会話の相手に殺すなどと言われたら、もうちょっとうろたえるのではないか。「ああ、やっぱりか」というニュアンスを感じる。

「それでも殺すと言うのですか」という返し方が自然な会話があるとしたら

「私が殺されると〇〇になってしまいます」とか「〇〇がバレてしまいますよ」→「それでも僕を殺すと言うのですか」みたいな感じではないだろうか。

殺すという行動によって不都合があるがそれでもいいのか?と問うなら「殺すと言うんですか」は自然だろう。

ここでは、コナンでは常套手段の重要ワードの省略でミスリードしているおそれもある。

「それでも(ラムは)僕を殺すと言うのですか」

「それでも(アマンダは)僕を殺すと言うのですか」

「それでも(浅香は)僕を殺すとい言うのですか」

「それでも(烏丸は)僕を殺すと言うのですか」

と、羽田事件の関係者を主語に持ってきて、その人物が自分に対する殺意があることを若狭から聞いた、というの可能性。

相当な推理力か

コナン世界において推理力の優劣からキャラクターの正体にアプローチするのは有効だと思う。

前提として、作中では推理できるキャラと推理できないキャラではっきり書き分けられている。例えば、コナンや服部平次、彼らの親世代や世良は推理できるキャラだし、灰原や妃先生、有希子らも推理はする*2。警察関係者も推理できないキャラではない。

一方、蘭や園子、和葉や他の探偵団の子供たちは原則として推理できないように書き分けられている。彼らが推理力を出せる条件としては、コナンや灰原が手伝った時や、コンビニ事件で友人を救おうと新一の助言を受けた蘭*3などかなり限られた事例。

推理できるキャラにも明確なレベル分けがある。コナンより推理力が上の人物設定としてよくあるのは、彼らの親世代。工藤優作、服部平蔵、赤井メアリーらは高レベルの推理力があるようだ。

となると、若狭先生は骸骨事件や白い手の女,燃えるテントの怪でコナンよりも早く真相にたどりついている描写が見られるので、コナンより上の推理力を持つ可能性がある。

コナン「まあ、この暗号を解くには別のなにかがいりそうだけど…」

若狭「……」

小林先生「あ、若狭先生!」「すみませんけどこの定規…準備室にしまってくれますか?」

若狭「あ、はい…」

(受け取った定規で後ろに会った時間割表を破ってしまう)

91巻ファイル8

 この流れをみれば、【ヒントを求めるコナンを見る→ヒントを出せそうな道具が目の前にきた→それを使った】と考えるのが素直な読み方で、この点は意図を持って描かれている。

このことから、若狭もコナンの親世代である可能性を考えるのは自然なのだが、現時点では候補者がいない。

もっとも、若狭はラム候補の1人であって推理キャラとして位置づけられているかは微妙で、たとえばバーボン編における安室や沖矢のように主体的に事件を解決する描写はないのでこの法則の適用外なのかもしれない。

さらに、若狭が羽田浩司事件に関与しているなら、身分は組織の人間か別の諜報組織にあった可能性も高い。そうなると高い推理力を持つ理由も説明がつくので、必ずしも親世代じゃなくてもいいのかもしれない。

APTX4869投与リストを所持

修学旅行後日談編のあと、ラム候補者3人がそろって工藤新一の生存情報を打ち消すSNSの投稿を見ているけど、若狭先生だけはAPTXのリストを見てニヤついている。若狭が羽田浩司事件の関係者であることは間違いないけど、新一がAPTXを盛られたのは作中では最近という設定なので、このリストもごく最近若狭が何らかの手段で入手したものとみられる。

なお、アニメでは若狭はPCに表示させたこのリストをスクロールしながら見ており、実は新一ではなく羽田浩司のほうに注目していた、とする見方があるけど、当然コミックではそういったスクロールの描写は不可能。アニメだけの描写は考察には使えないことを留意する必要がある。

右のコマに若狭の姿があり、その左には画面の新一と羽田浩司の部分を拡大したコマがある。これはあくまで場面の一部をズームするという漫画の表現技法の一つだろう。左のコマでリストが交互に網掛けされているが、右の引いたカットでは網掛けされておらず、これも表現技法の一つ。伏線ならどっちにも網掛けしておかないとルール違反だし、これは深く考えなくてもいい気がする。

 やはり、若狭がどうやってこのリストを入手したのか、入手した理由や若狭と薬の関係について詳しく検討するほうが大事だろう。

戦闘力がとても高い

犯人1「き、気絶してやがる…」

犯人2「な、何で!?」

若狭「覚悟は出来ているか?」

犯人1「え?」

若狭「此の世を離れる…覚悟だよ…」 

91巻ファイル9

一人目は素手で、あと二人はグランド整備で使うトンボを使ったかもしれないが、やっつけてしまう。

ゲスゴルファー「どけえ、ガキ共!!」「「こ、この女…」

(若狭、肘打ちで撃退)

光彦「わ、若狭先生!?」

若狭「痛たたたた…」

元太「大丈夫かよ!?」

若狭「この人に突き飛ばされて転んじゃって…」「え?あれ?」「へ?」

92巻ファイル10

今度はゲスゴルファーの足を引っ掛けて転倒させた上で肘打ちをかます。ただ強いだけじゃなくて、それをうまくカモフラージュしている。

上腕などに傷

 絵だけの情報だが、ここの若狭先生は下着姿だけど顔はいつもの若狭先生。自宅でほかにはだれにも見られる人がいないのに、顔だけ変装してた、なんていうのはおかしいので、やはり若狭先生は変装キャラではない。

傷をどうみるかということだが、ここでは作者がなんで傷を書いたのか考えたほうがいいのかも。若狭先生の羽田事件への関与はテント炎上事件で明らかになっている。かつ若狭先生は右目が義眼であると言う情報や戦闘に長けているという描写も複数あるので、それとこの傷とを合わせて考えると、ラム編ではずっと義眼というキーワードが出ていて、羽田浩司事件でなにか失敗したという情報が与えられているのだから、若狭は羽田浩司事件で何者かと戦闘し、その際にこの傷を負ったと考えるのは妥当だろう。

ここで、この傷が実は1ヶ月前の傷でした、となる可能性もなくはないが、一応ラム編からの登場人物でこれだけの条件が揃っていれば、いま出ている情報以外に後出しがあるというのは、まあ考えなくてもいいかなという感じ。

ちなみに、右斜め前からのコマで描かれていて、若狭先生の左腕や左脇腹に傷が目立つように書いあるから、傷を負わせたのは右利きの人間かも。脇田も黒田も一応右利き。 

若狭先生の人柄

いい人?悪い人

若狭のこれまでの行動を整理すると、初登場エピソードでいきなり犯人らを制圧し「ただ者ではない」様子を暴露するなど、なかなかユニークな人物。灰原がラム編冒頭で言っていた「女のような男」という人物像にも合うし、仮に若狭が腕利きのボディーガード「浅香」でも、組織No.2のラムでもぴったりである。

それに、ただ強いだけではなく、若狭が本性を表したときに出る独特の憎しみや恨みといった「負のオーラ」はすごい。

これまでの組織編を振り返れば、ジョディ先生だってFBIだった父をベルモットに殺され相当な恨みを持っているはず。

同様に赤井だって父や恋人を組織に奪われたとも考えられる。感情をうまくコントロールできる安室でさえも、スコッチを自決させたと思っている赤井が絡むと途端に冷静さを欠いてしまう。

でも彼らは、いちいち憎しみを他人にわかるようにあらわにしたり、日常編で想起してうろたえたりすることは少ない。

若狭先生はこれとは対象的に、観察対象のコナンの前であってもこの憎しみのオーラが抑えきれない。義眼とみられる右目を抑えて座り込むほど、強い背景があり、これには相当な理由があると思われる。

根は優しかったはず

若狭はテント事件では歩美ちゃんを助けて涙を流しているし、その後のクローバの回では歩美ちゃんがプレゼントした四葉のクローバーをしっかり受け取って、歩美ちゃんにお礼を言って傷つけないように気を使った上で捨てている。

根っから本当に悪いやつなら、こうした行動は不要なはず。コナンや灰原らにだけ良いように振る舞い、正直面倒な歩美ちゃんらとの交流は最低限にしてもいいはず。自身の素性がバレてしまいかねない行動をとってまで、いちいち歩美ちゃんを救う必要はない。

いくらコナンを事件に関わらせるためとはいえ、自宅に招きオムライスを振る舞うなど、目的を果たすだけなら不要とも思える段階を踏んでいるのは、やっぱり若狭先生の根がいい人だからではないかと思う。

少なくとも、コナンとの接触や羽田浩司事件に関わる何らかの目的を遂げるためなら、自ら柔軟に対応する気持ちはあるはずだ。

もっとも、こうした行動すべてが演技、とも考えられなくはないけど、わざわざこんな回りくどい演技をする理由が作中においても、メタ的な読者視点においてもない。

また、コナン世界では変装術に重ねて演技力もある程度裏打ちが存在している。実際コナンの変声期を使ったたくみな話術は母親譲りと灰原に指摘されている。そうしたことを踏まえても、若狭の行動がすべて演技、というのは考えにくい。

 

小ネタ

報道されたい?

光彦「早っ!?」「倉庫で見つかったガイコツ記事もうネットに流れてますよ!」「しかも暗号が書かれたハチマキまで…」

元太「マジかよ!?」

若狭「あのー、君達…」

91巻ファイル8

 この会話の後に若狭先生がすぐ会話に入ってくる。さすがに小学校で見つかったガイコツでいちいちネットニュースがこんな早く報道するのはおかしい。この時点でガイコツのことを知っていたのは探偵団以外では校長、小林先生、若狭先生に白鳥警部ら警察関係者。

この手のニュースを当局側からの発表で入手するとしたら、警察発表や行政、あるいは帝丹小学校自身が、というのも考えられる。でもネットニュースでいちいちこんなネタを記事にするくらいだから、報じたのはネット専門メディアっぽい気がする。この話だけでは、情報を流したのはだれか分からない。

記者「プロゴルファーの伴野貞悟さんの家で殺人があったって本当ですか!?」「殺されたのは誰ですか!?」「犯人の目星は!?」

元太「この兄ちゃんだぞ!」

記者「伴野本人が!?」「では、たった今取り押さえた所なんですね?」

若狭「いえ…私は突き飛ばされて転んだだけで…」

記者「よろしければお名前を」

歩美「帝丹小学校1年B組副担任若狭留美先生だよ!」

92巻ファイル10 

若狭は推理力が高い設定のキャラなので、有名人のゴルファーの家で事件があったことを踏まえ外に報道陣が集まっていると推測することも容易。襲われる直前のコマで若狭は一番うしろにいるけど、なぜか入り口のドアが少し開いてるのは報道陣に見せるためにわざと若狭が開けてた可能性もあるかも。

まあ、ここではは若狭がわざと報道されるように仕向けたかどうかより、カメラやマイクを向けられた若狭がそれをさけようとしてなかったことのほうが重要かも。例えば灰原だったら、カメラに写りそうになったときにはすぐに隠れるし、見知らぬ人にも警戒する。

それに比べると若狭はカメラも避けない。これに前のガイコツ事件が効いていて、報道されるとすぐネットにアップされますよ、ということを若狭は認識していながらカメラを避けなかった。すくなくとも報道されるのをプラスに考えてそうだ。

金持ち

光彦「へー…若狭先生って高層マンションに住んでるんですね!」

92巻ファイル8

金持ちの伏線がラム編で活かせるとしたら、まずは秀吉が養子に入った羽田家。資産家だとされている。事件の関係者ではアマンダも資産家だ。大岡家についても資産家だが、大岡紅葉は劇場版で先行して登場した逆輸入キャラなので、個人的には考察には使わないことにしています。

絵がうまい

元太「でもこの虎の絵スゲーよな!」

光彦「はい!とてもリアルで迫力満点です!」

歩美「若狭先生が描いたんだよね?」

若狭先生「先生、割と絵が得意だから…」

92巻ファイル8

料理も上手

じゃあ手伝ってくれたお礼に…先生がオムライスご馳走するね!

元太「マジか!」

歩美「おいしー!」

光彦「絶品です!」

元太「今まで食べた中で一番だぞ!」

92巻ファイル8

今のところこのあたりの追加伏線はなし。戦闘能力の高さは繰り返し出てくるけど、まあこの2点は若狭の人間味を出すためとかとも。仮に若狭が浅香なら、アマンダのボディガード兼身の回りの世話をしてて料理がうまくなった、とかの設定はあるかも。 

*1:53巻ファイル5「1年B組大作戦」

*2:40巻「似たものプリンセス」など

*3:42巻「コンビニの落とし穴」