ラムの正体が判明
ラムの正体が判明した。前半はこれまで原作で明かされてきた人物像との照らし合わせ、後半は今後の展開予想。前半は過去記事と重複する部分が多いので下記を参照。
ジン「こいつは何だ!?どこで会った!?」
コルン「間違いない…」「コイツ見た…」「2年前…RUMが送ってきた写真…」「コイツだった…」
キール(「2年前!?写真!?」)
キャンティ「はぁ?」「なんでアンタに写真を送ったのさ?」
コルン「俺…待ち合わせの倉庫、見張らされてた…」「でも待ち合わせ中止…」そしてRUM…写真付きのメール送ってきた…赤井(ライ)とコイツFBI見たら撃ち殺せって…」
ラム「懐かしい話ですね…」「今回の件はあの方のからお叱りを受けました…」「少々目立ち過ぎだと…」「だがFBIが必死に守ろうとしていた男を葬った事は…評価するとも」「私としては生け捕りにして…色々、聞きたかったんですけどねぇ…」
(中略)
ラムの回想<キャメル「ここは危ないからいちゃダメです!おじいさん!!」>
運転手「到着しました」「御苦労…」
ファイル1066(100巻収録予定)
ひさしぶりの大型組織編になったFBI連続襲撃事件で、ラムの正体が明かされた。コナン組織編基本構造の3回目にふさわしい、息もつけない展開は相当ひさしぶりで、おそらく赤井が偽装死した赤と黒のクラッシュ*1以来だったのではないか。
初登場から正体判明の整理
これまでの大型組織編は以下の通りだった。
- ベルモット編:黒の組織との再会(24巻)→二元ミステリー(42巻)で18巻分
- バーボン編:赤白黄色と探偵団(60巻)→ミストレ(78巻)で18巻分
- ラム編:緋色のエピローグ(85巻)→FBI連続殺人事件(100巻)15巻分
正体判明だけで見るとこれまでよりやや早くなっている。
なお、参考までに連載にかかった期間(単行本基準)で見ると
- ベルモット編:1999年7月~2003年7月(4年1か月)
- バーボン編:2008年1月~2012年12月(4年2か月)
- ラム編:2014年12月~2021年12月(予想)(7年1か月)
ということで、3巻少ないのに3年も長く連載にかかっている。ラム編は半年近くの休載を挟んだこともあるのでこうした事態になっているのだが、それにしてもベルモット編が終結したあとに生まれた人でさえ、もうコナンらの年齢を追い越しているとは、灰原が言うように、時間の流れには逆らえない笑
これまでのラムの人物像と一致するか
ウォッカ「しかしRUMの旦那にも驚くぜ…」「いきなり会話に入ってきて俺達に指示出してそれがズバズバ的中してんだからなァ…」
キャンティ「旦那って…あんたRUMの顔見たことあんのかい?」
キャメル(「え?」)
キャンティ「イメージだよ…大男だとか女のような男とか老人とか義眼とか噂されてるが…」「ジンの兄貴が言うには…確かなのは義眼だけで後はほぼ護身のためにRUM本人が流した偽情報らしいよ…」
キャンティ「じゃあジンはRUMに会った事あるんだねぇ…」
ウォッカ「ああ…どこで何をやってるのかも知ってるって」
キャンティ「へぇ~?RUMはどこで何やってんのさ?」
ウォッカ「そいつはそいつは聞かされてねぇが…ジンの兄貴が言ってたぜ」「顔を変えてふざけた名前を名乗ってるって…」
ファイル1065(100巻収録予定)
一致する点
・男性用コードネーム
ラムは蒸留酒であり、ジン、ウォッカ、バーボンらと同じく男性の構成員につけられる名前。脇田は男性なので一致している。
・義眼
ウォッカ経由でジンが明かしていた情報によれば、ラムが義眼だというのは正しい情報。FBI事件で素顔を明かした脇田の目は描かれていなかったので、これも一致している。
・ふざけた名前
脇田兼則=Wakita Kanenoriで
並び替えると Tokiwa kanenari=時は金なり。「ふざけた名前」という表現には合う。
・性格の一致
コナン「RUMって知ってるよね?」
安室「一体君はどこからそんな情報を」
コナン「会ったことあるの?」
安室「どう答えたらいいか…悩むよ…」「会った事があると答えれば君は僕が関わっている人たちに探りを入れ始めるだろうし、会った事ないといえば君や僕に近づく人たちを必要以上に警戒するだろ?」
コナン「そだね…」
安室「どのみち、僕にメリットはないけど…ヒントとして君に言えるとしたら…その人物はとてもせっかち―ってことくらいかな」
コナン「(せっかち…)」
97巻ファイル4
安室によれば、ラムは「せっかち」。コナンらの前に現れている脇田もせっかちな性格なので一致している。
小五郎「ーってかアンタまだ目の出来物治らねぇのかよ?」
脇田「なおりかけてたんですけどかゆくてかいたら…前より酷くなっちまって…」
97巻ファイル2
治るのを待てずかいてしまうのはせっかちの隠喩でもあるかもしれない。
・灰原センサーが強く反応
灰原「ドックン」
コナン「お、おい?どうした?」
灰原「だ、誰かが…」「誰かが教室の外に」
(中略)
脇田(「帝丹小学校19期生は…あの宮野明美だが…死人が来るワケないか…」)
ファイル1072(101巻収録予定)
灰原センサーの発動はキャンプ回で若狭に反応して以来。しかもこのタイムカプセル回で灰原は姉からの感動的な手紙を手にしていた。心穏やかな状態でも感じるほどの組織臭であることを示している。これで出どころが脇田じゃなかったらコナンはギャグ漫画なので、主は間違いなく脇田だ。
・いろは寿司にいる
ラムの目的から一致点を探る。ラムはそもそもなぜ動き出したのか。緋色のエピローグでラムの登場が発表されてから、ラムから動いたという描写はしばらくなかった。逆に、コナンが灰原からもたらされた義眼だという情報をもとに、周辺にいた大和や黒田に疑いをかけていく展開が続いていた。
羽田浩司事件が明るみになり、それにラムの関与が判明したのは17年前と同じ現場(89-90巻)で、それ以降脇田の登場は92巻「隣の江戸前推理ショー」となる。
ラムが活動の拠点にいろは寿司を選んだ理由は何なのだろうか。可能性としては次の2点だ
安室の監視
ベルモット「まぁ、これから先、勝手な行動は避けたほうがよさそうね…組織に鼠が入り込んでるって…ジンが問題視していたし」「本堂って男とFBIの赤井とあの男で3人目…」「ほら、公安から潜り込んでて名前を聞く前に殺された…」
安室「……」
ベルモット「コードネームはたしか…」
安室「スコッチ…」「でしたよね?」
85巻ファイル5
ジンが問題視しており、組織幹部のラムも安室に同様の疑いをかけているので彼が潜入しているポアロの隣に近づいたという可能性もある。バーボンがNocではないかとはいまのところ組織のメンバーには全く疑われていなようだが、脇田からはバーボンに対して意味深な発言が連発されているので、ラムの監視対象のメインはバーボンでもおかしくない。
工藤新一の調査
工藤新一の情報を要求する
Time is money!
急げよバーボン
―RUM―
95巻ファイル5
工藤新一の情報
急げ!
Time is money!
―RUM―
95巻ファイル8
工藤新一がラムの大きな関心事になっていることは間違いない。修学旅行で生存が疑われてしまった工藤新一について、ラムは少なくとも組織が殺したはずという認識があり、それに反する事実が出てきたので部下であるバーボンに調査を求めたということ。
逆に言えば、新一への関心は修学旅行で生まれたこと。つまりそれより前にいろは寿司にやってきた脇田のメインの目的は工藤新一の調査ではないと考えるのが妥当だろう。
こう考えれば、いろは寿司は安室の監視や工藤新一を探るのに適した場所だ。
疑問
それでも、実は脇田=ラムで腑に落ちない点が残る。そういった内容は別稿で触れていきたいので、下記では項目だけ簡単に触れていく。
・安室の目の書き分け
ラムメールの1通目と2通目で目がかき分けられているという点。ラムが二人いるのではないかという説や、ラムの名で別の人物がメールを出したという見方が依然として残るっている。
・性格の矛盾
安室は「ラムはせっかち」というが、ラムとして読者が接する人柄は必ずしも「せっかち」とは一致しない。
ラム「待て…」「私の話を聞きなさい…」
ファイル1062(100巻収録予定)
FBIがニセの暗号を組織に送ったことを見破り、ジンらが罠にはまるのを防いだ。どちらかというと慎重な正確だというあの方みたいな性格という印象を受ける
ラム「やはりそうでしたか…」「この時期この時間帯東京湾の海流は海猿島方面に流れています…」「その海流に乗って水死体が海猿島に流れ着いたこともあったとか…」「クルーザーは手配済み…島に上陸して逃げたFBIを狩りなさい…」
ファイル1064(100巻収録予定)
こちらも同様。全体にていねい口調であるのも気になるが、海ボタルから転落したキャメルが逃げ切ったことを考慮してクルーザーまで手配していた。ジンが気が付かなくとも島は捜索する予定だったということになる。
ラム「待ちなさい…」「もっといい方法がありますよ…
ファイル1065(100巻収録予定)
また「待ちなさい」という。一つ一つの行動を精査し、よりよい方法を提案するイメージ。まあせっかちと両立しないこともないが、どちらかというとリスクを重視するタイプの性格な気はする。
展開予想
コナンより読者が先行する展開
ラム編は今後、どんな展開をたどるのだろう。
過去の組織編とラム編が決定的に違うのは、ラム編ではまだコナンが脇田=ラムとは知らない点だ。
ベル編では最終回でベルが判明した。しかしコナンは最低でも「4台のポルシェ」の時点でベルモット=新出と気がついている。当時、新出がベルだと正確に推理していた読者はかなり少なかったと推測される。
キール編では、コナンと一緒に読者が水無玲奈や本堂瑛祐の正体に迫っていたが、2人の関係や血液型のからくり、キールの正体にたどり着くのはコナンと赤井のほうがだいぶ早かった。
バーボン編では中盤終わり付近のミステリートレインで判明した。しかしこの時点で、バーボン候補の3人のうち1人は赤井扮する沖矢昴で、あとの2人も向こうからどんどん探偵事務所やコナンらの人間関係に食い込んでくる存在だったため、コナンは安室に対して既に警戒感は持っていた。
翻ってラム編では、開幕から15巻目でラムの正体が判明した。ところが、現時点でコナンはこれを知らない。それどころか、明確に怪しむ描写はまだ無く、候補者にも入れてないと見られる。
今後のラム編は、コナンより読者が先行するという異例の形を進んでいる。
早速その効果が現れたのが、5月にアニメが放送された「36マスの完全犯罪」(原作名・暗号に隠された殺意)だ。
この時点でコナンは脇田を一切疑っていない一方、ラムの指示を受けている安室にとっては緊張する場面。それが端的に表れているのがこの場面だ。
脇田「おやおやお2人さん…ずいぶん仲がよござんすねー
コナン「うんまーね!」
安室「でもまぁ…た
まに毛利先生の探偵事務所で顔を合わせる程度ですけど…」 脇田「…にしてはべ
らぼーに親密なコンビに見えやしたぜ?眼鏡の童子は結構頭が切れそうだ し」 安室「毛利先生を見て探偵の真似事をしてるだけ…」「所詮子供の浅知恵です
よ!」 脇田「へぇー、けどそいつは将来が楽しみでヤンスねー」
97巻ファイル5
コナンは安室に正体を疑われていることは気がついているようだが、脇田に対してはコナンがただの子供だと紹介していることに違和感を持ってもおかしくはない。
ただ、このあとのおっちゃんバターサンド回でコナンはまだ脇田を明確に疑ってはいない。「将棋の駒」の話を向けられたときの返事も本当にしらないのかとぼけたのかはっきりしない
蘭「すごーい」
沖野ヨーコ「コナン君ホント天才ね!!」「お父さんすぐ抜かれたりして!」
コナン(「やべ…」)「でもダイヤのスペル忘れちゃったから…その先が読めないかも…」
脇田「まあ、そこに在るべきものが無くなっていると気になりますからねぇ…」「そう
…例えば…」「将棋の駒とか…」
コナン「へー、そうなんだ…」
脇田「気になりやせんか?」
コナン「うん!全然!」
99巻ファイル10
まずはコナンが脇田を警戒することから
したがって、今後はコナンが脇田を明確に疑う話が待たれる。環境的にはいつでも気がつける状態にある。
いろは寿司に脇田が現れた時期はコナン世界の時間軸でも緋色シリーズのあとなので、自らのそばにその時期に現れた脇田を疑うのは自然だ。
加えて脇田の江戸っ子口調。かつて「犯人は元太の父ちゃん」で、コナンは江戸っ子口調に関して見破っている。
コナン「昔ながらの江戸っ子は「ひ」とか「ひゃ」とか言ってるつもりでも「し」とか「しゃ」って発音しちまう人が多いっていうから…まあ方言みたいなもんさ!」
63巻ファイル8
「脇田さんって江戸っ子口調なのに妙だな…」と気がついてもおかしくない。
そして「ふざけた名前」の意味。
安室からラムの性格についてせっかちだと聞かされているので、時は金なりのアナグラムの偽名を騙っている脇田を疑ってもいい。
そのほかに、前述した雪山教会事件での言動やバターサンド事件でのやりとり、灰原が組織臭を感じたタイムカプセル回で寿司の出前をとったのがいろは寿司だと分かれば、いつでも気がつける。
コナンが最後までラムの正体にたどり着かないことがあるか
コナン組織編の基本構造におけるステップ4に至るまで、コナンが脇田=ラムにたどり着けないこともありあえる。過去の組織編を照らせばベルモット編基準だと103巻まで、ミストレから緋色シリーズまで7巻分引っ張ったバーボン編基準でも107巻ごろに終わるという予想ができる。
となると、コナンや赤井、あるいは公安部などラム討伐=大事を企てるまであと7巻。これではベル編やバーボン編みたいに日常編でラムの正体に迫っていくにはちょっと足りない気がする。
加えて、2022年春の劇場版について。高木刑事や佐藤刑事のほか、松田や萩原といった警察学校同期組を主体とした作品になるとされており、直近の連載回もその準備と思われる話だった。部分的に劇場版関係の話で102巻~103巻までかかりそうなので、けっこう窮屈である。
バーボン編中盤以降、作品としての名探偵コナンの引き伸ばしが目立ってきたが、そういう意味ではラム編の終結が110巻くらいまでずれ込む可能性もありそうだ。
羽田浩司事件からのアプローチ
そもそも、ラム編はこれまでの組織編と同様の終わり方をするのか。
よく考えてみれば、組織No.2のラムまでたどり着いたんだから、次はボスの話をしないで何をする!?
と正直思う。
だったら、ラム編の終わり方はこれまでの組織編を脱構築しなければならない。
つまり、ある組織のメンバーが誰なのか判明したあと、次の組織メンバーが動き出すという構造そのものをやめて、これまでとは全く違う話を展開するのが自然ではないかということだ。
そこで、ラム編の終わらせ方のアプローチの一つは間違いなく羽田浩司殺害事件の謎解きになるはずである
というか、羽田浩司事件の真相が分かれば、ラムが事件にどう関わったのか、公安は事件の何を追っているのか。黒田はけっきょく何者なのか。そして若狭とメアリーはどう関わったか、赤井務武の消息といったラム編以降に張られた未回収伏線はすべて羽田事件につながっている。
鍵を握る人物は、コナンでも赤井でもなく、羽田事件に主体的に関わっているの若狭留美
羽田浩司事件を解決するためのボールは若狭にあるので、若狭の動きや過去の回想から出る新事実に期待である。。
*1:57巻ファイル9「鴉の唄」から59巻ファイル1「鋼の楔」まで。ただこれはFBI襲撃事件より日常編の要素もあったので、実際にはもうすこし短い(それでも長いが)